詩のみずうみ 

割り切れない気持ちを割り切らないまま表現します              ※無断転載、印刷配布おことわり © 環つやこ 2014

かかわらなければ・・・塔和子「胸の泉に」

 

 

 

 

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 先日、子どもが通う進学塾から一本の電話がかかってきました。

校舎長の先生からで、子どものふざけていたことが原因で友達が転んでしまい、ご両親

がご立腹だというものでした。私たち夫婦で塾に出向き、相手のご両親と対面してお詫

びするという運びになったのですが、まったく「和解」が見いだせない面会となって

しまいました。私たちの家族の事実にはないことを、私たちの子どもが自慢して

相手のお子さんを傷付けたとか、事実誤認のまま、感情的な言葉の刃を私たちにふりか

ざしてこられたのです。

 

相手のお子さんにはけがもなく、医師の診察を受けられて診断書にも何も異常ないと書

かれていましたが、診断書代を請求され、私たち親と子どもの人格を否定するような言

葉の数々を、初対面にもかかわらず、事実確認もないままに浴びせられ続け、私はじっ

と膝の上のてのひらをぎゅっと握って、我慢していました。

私たちが平身低頭に謝罪しようにも、話し合いは解決には向かいませんでした。

 

私はこの電話を受けたときに嫌な予感がし、敏腕弁護士を夫にもつ友人にいったん相談

してから面談に向かいました。もちろん面談の時は、ボイスレコーダーでやり取りをす

べて記録しました。法的な手段に出ることも考えましたが、お互いの子どもに与えるダ

メージや費やす労力を考えると、時間がもったいないという結論に至り、こちらが塾を

辞めることにしたのです。ご同席頂いた校舎長先生も「このようなケースは初めてで

す」とのことでした。私は心身ともに疲れ果ててしまいました。この方たちは、世に言

モンスターペアレンツだったのでしょうか。

 

子どもに降りかかる災難を、すべて親が取り除いていけるのでしょうか。

また、そうしたことが子どもにとって本当にプラスになるのでしょうか。

息子は「あいつは仲間だ。僕が辞めたら、あいつがみんなからまたなにか言われる」

と最後まで相手のお子さんのことを気にかけていました。謝ろうとして、ずっと塾を

さがして走り回っていたということも聞きました。こんなにしてまで、私たちを痛めつ

ける必要があったのでしょうか。私には、割り切れない思いがまた降り積もってきまし

た。

 

年末の大勢の人が行きかうターミナル駅の改札口で、ある友人が

「人生万事塞翁が馬って言うじゃない?また、次の塾にいったら成績が上がるかもしれ

ないし、いい友達ができるかもしれないしね。」

この言葉を聞いた瞬間、ふっと心の重荷が軽くなるのを感じました。ことわざって、丸

暗記するためにあるんじゃないんですね。こうやって凝り固まった思考の方向を不意に

変えてしまう、心を軽くしてしまう魔法があるのだなと思いました。持つべきものは友

ですね。

私は今回も友達に救われたのでした。

 

 

そんな時に出会った詩があります。

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ハンセン氏病を患い、国立療養所大島青松園で生涯を閉じた詩人、塔和子さんの詩で

す。塔和子さんは、療養所という極度に隔離された辛い環境で、もっとたくさんの人

と、この世の中と関わりたかったのではないでしょうか。その胸の痛みから編まれた言

葉は、私の胸にも届き、つよく強く揺さぶられました。

 

「かかわったが故に起こる幸や不幸を積み重ねて大きくなり 繰り返すことで磨かれ」

だからどんなに辛くても理不尽なことが起きても、私たちは生かされているのかもしれ

ないですね。

 

私たちはこの世を見るために、聞くために、生れてきた。だとすれば、なにかになれなくても、私たちには生きる意味があるのよ

                元ハンセン病患者役のせりふ

 ある時、ある場所から見つめているものがいるということが、世界を支えている。だれも見なかった、だれも聴かなかったら、世界が語るということもなかったのだから。命ある者の体験と語り、その一つ一つが世界の存在についての証言である。ドリアン助川原作・河瀨直美監督の映画「あん」から。

2015年11月17日朝日新聞朝刊 鷲田清一 折々のことば 229 より引用

年末を締めくくる文章として、ふさわしいのかどうか迷いました。不快な思いをされる

方もいらしたかもしれません。もしそのような思いをさせていたら、申し訳ないです。

私が見た、聴いた現実を、私の視点から、よりよき人の世になりますようにと祈りを込

めてこのブログを書き続けていきたいと思います。そして、「割り切れない思いを割

り切らないままに表現する」というこのブログの副題のように、私の心に降り積もる

もやもやを詩にしていくことを続けていこうと思います。応援してくださる

方々、本当にいつもありがとうございました。

みなさま、良いお年をお迎えくださいね。